足るを知る料理

2026/07/29


「足るを知る」という言葉があります。

中国の古典『老子』の中にある「知足者富」という一節が元で、
意訳すると「足ることを知る者は、心が豊かになる」という意味です。

これは我慢しろとか、欲を持つなということではありません。

本当に必要なものは何かを見極め、そこに満足できる人ほど、
余計なものに振り回されず、ブレがなくなる。

そんなしなやかな強さと、幸せの大切さを表した言葉です。

これ、料理でも言える考え方なんですよね。
がむしゃらに積み上げるのではなく、本当に必要なちょうどよさで止める。
 

料理を作っていると、「もう少し味を足せば安心なんじゃないか」「これだけだと物足りないんじゃないか」というシーンに出会います。


若い頃のボクはまさにその典型で、調味料も手間も足せば足すほど良くなると思い込んでいました。

でも、仕事で料理を続けていくほど分かってきたのは、その逆でした。

調味料をひとつ足したとたんに、なぜか全体の味がぼやけることがある。


料理は「足す」より「どこで止めるか」で決まるという事実でした。

上手く言えないのですが、引き際のようなもの。

何度も味見をして味が決まらないとき。あれこれ加えるほど、かえって訳のわからない味になる。

そしてこの考え方は、料理だけではなく、情熱弁当の店づくりにも通じています。

たとえば、ほぼ毎週末に開催している、店頭での惣菜販売会

「情熱テイクアウト」。(直近は今週日曜日30日)

使う容器は、あえて簡素なものにしています。

最近だと、バイオマス使用の容器や袋など。

唐揚げとかだと、揚げたてもあって紙袋とか。

デパ地下に行けば、惣菜や弁当は、凝ったパッケージや鮮やかなシールが貼られて並んでいます。商品を魅力的に見せるために華やかに装飾するのが定番です。

でも情熱テイクアウトは、「家庭で食べるお惣菜」がテーマです。


お客さまは家に帰って、お皿に盛りつけて食べる方がほとんど。
だから容器を派手に飾る必要はあまりありません。

衛生的で、運びやすく、シンプルであること。
そのほうが、お惣菜そのものの姿が素直に伝わる。

派手さよりも、どちらかと言えばエコ寄りですね。


 

これもまた「足るを知る」の一例だと思っています。
過剰に足さないことで、むしろ本質が際立つ。

ボクの料理にも、情熱弁当そのものにも共通しています。

足すことは簡単です。
止めること、引くことのほうがずっと難しい。

でも、そのギリギリのラインに、料理の面白さがあって。

素材、調味料、時間、手間。
その掛け算の中から“ちょうどいい”を見つける作業が、料理そのもの。

必要以上を足さない。足さなくても満足できるものに仕上げていく。

それがボクの料理の本質であり、情熱弁当の根っこにある価値観でのひとつです♪