2026/07/29
自分が若かりし頃。
ホテルオークラ「山里」では、一年生の「洗い場」の人が、親方の昼食を日替わりで作らせてもらっていました。
新入りなので、料理自体がそもそも作れない。笑
毎日が鍋や調理器具の洗い物ばかり。営業中もしゃぶしゃぶやすき焼きの野菜を盛り付けたり、肉をスライスしたりといったことだけでしたからね。
料理人見習いとして、まずは現場にしがみつくことで精一杯でした。
だから、親方の昼食を作る番が回ってくる日は、本当にビクビクしていました。
自分の日常食なら、多少失敗してもいい。
でも、人に食べていただく料理は違います。
美味しいと言っていただく。
喜んでいただく。
そのためには、ただ作れるだけでは足りないんですよね。
そんな頃のボクは、自信がないからこそ、一皿にあれもこれも入れたくなっていました。
これも入れた方が豪華に見えるかな。
これも添えた方が手が込んで見えるかな。
もう少し味を足した方が、満足してもらえるかな。
でも、今ならはっきりわかります。
それをやりすぎると結局、何を食べさせたいのかが伝わらないのです。
料理は、足せば足すほど良くなるわけではありません。
むしろ、引くことで見えてくる美味しさがあります。
情熱弁当が、マルシェや朝市などで販売している「オーガニック惣菜盛り合わせ」
一折に9種類くらいのお惣菜が入っています。
一見すると、品数が多くてにぎやかに見えるかもしれません。
でも、それぞれの料理自体は、実はシンプルなんですよね。
例えば「小松菜としめじのおひたし」。
主役は小松菜としめじ。それで十分です。
その他にえのきやなめこ、舞茸など色々入れると…
でも、食べた人の印象はぼやけます。
何を味わえばいいのか、ピントがずれてしまうのです。
各料理の使用素材は、2~3種類以内にとどめておくのがお惣菜の在り方。
それくらいにしておく方が、食べる人の舌も、頭も疲れません。
「ひと目で見てわかる料理が9種類。それぞれ別の味付けや調理方法で楽しんでいただく」のですね。
ちなみに、あまりにも使用食材が多すぎたり、凝りすぎた料理が一回の食事に並ぶと…
「美味しかったけど、食べたものを具体的に思い出せない」状態になります。シンプルに削ぎ落として、それでも喜んでいただけるものを目指すべきなのです。
情熱弁当の十八番。
胡麻豆腐なんていい例です。
上から山葵醤油なんてかけません。
味気ない見た目ですが、そのままお口に運んでいただければ、お口の中が幸せになります。
なにせ、これだけを目的に県外からいらっしゃる方がいるくらいですから。
足さないからこそ、伝わる味がある。
飾らないからこそ、残る味がある。
ボクは、そういう料理が好きです。
「原田主税の自信の一品を出せ」と言われたら。
ボクは「きんきの煮付け」をお出しするかなぁ。
旬の素材の目利き、調味料のタイミング、煮詰める時間を逆算して、煮汁を豆腐や牛蒡に染み込ませる。魚はふんわりと煮汁でコーティングし、中は真っ白。蒸し上げたように仕上げます。
とてもシンプルなんですけど、魚の脂やコク、骨の旨味が合わさると、別次元の煮魚なんですよね。
その代わり、一皿5000円以上はいただきますが。笑
情熱弁当は、これからも足しすぎない料理を大切にしたいと思っています。
素材本来の味を、ちゃんと感じていただくために。
食べ終わったあとに、ああ、あれ美味しかったなと思い出していただくために♪
シンプルの中にこそ、本当の美味しさはある。
ボクは、そう信じていますよ♪